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ゾロ誕2015☆リクエスト小話 (4つ)

※ゾロ誕2015を記念して、Twitterでリクエストを募集させてもらいました。お話はそれぞれ独立して、4つあります。

ホワイト・アウト [ハンゾロウ × サンジーン]

 

リクエスト:ふたりきりで暮らしてるサンジーンさんとハンゾロウさん

 

 

鍵をかけていない重い扉がノックもされずにいきなり開いた。

靴も脱がずにどかどかとなだれ込み、そのままソファに倒れこんでくる。

「……酒くせェ」

革張りのソファにかいたあぐらの上、男が無遠慮に身体を横たえてくる。ハンゾロウはこれみよがしに舌打ちを零して口元から酒瓶の口を離した。

「おい、どけろ」

ゆさゆさと身体を揺すってやれば「んー」と面倒くさそうに喉を鳴らす。新調したての真っ白なスーツが一面鮮やかな紅に染まっている。

「……血、ついたら取れねぇだろうが」

「んなもん俺が洗ってやるよー……」

ごろり、と仰向けになって甘えたように両手を伸ばしてくる。ハンゾロウはひとつため息をついて、苦い唇にキスを落とした。

 

流れの辻斬りとして半生を送ってきたハンゾロウが、たまたまそのとき居ついていたアパートに、ある日突然飛び込んできたのがこの金髪男だった。

大雨の降る夜だった。壊れかけのベランダをびしゃびしゃと雨が濡らし、夜の街は海の底に沈んでいた。

全身を突き刺すような激しい気配にハンゾロウはピリリと耳を澄ませる。

『なんだ、こりゃあ』

自分を狙っているわけではなさそうだった。しかし異常なほどの強烈な殺気。

ハンゾロウが剣をかまえた0コンマ2秒。重い扉がガチャンと音を立てて開いて、軋みながら静かに閉まった。

「……誰だ、てめぇ」

真っ白い羽をふわりと揺らし、紅に濡れたジャケットを脱ぎ捨てる。

「悪ィな、ちっと雨宿り、させてくれ……」

男はそのまま床に倒れ込んでそれからすぐに意識を失った。外階段をドカドカと物騒な足音が通りすぎるのを待って、ハンゾロウは構えた刀を鞘へとしまう。

――脇腹に一発。

真っ当な人間ならば、生きていることすらおかしい出血量だった。

紫に染まる唇に耳を近づけると、わずかながらに吐息が聞こえる。

「……チッ、生きてやがる」

面倒くせぇ。

ハンゾロウは吐き捨てるように呟いて、腰に挿した剣にもう一度手をかけた。

「応急処置だ。悪ィが、麻酔はねぇぞ」

かざされた剣先がチラリと光って、ふたりの間の空気を切り裂いた。

 

男は名をサンジーンと名乗った。

本名か偽名かは知らないが、どう見てもカタギの人間ではない。

脇腹に埋まっていた鉛玉を取り出してやってから三日目の晩、生きているのと死んでいるのを繰り返して何度目か、ふらふらと目を覚ました男はいきなりハンゾロウの腕を強く引いていた。

「なんのつもりだ」

「頼む……ヤりたくてヤりたくて死にそうだ」

そのまま床に引き倒されて、ハンゾロウの身体が覆いかぶさる形になった。ぐい、と押し付けられた細い腰が破裂しそうに熱を持っているのがわかる。

ハンゾロウはため息をつき、サンジーンの喉元に手をかける。

「てめぇ、殺されてぇのか」

「それでもいい」

ハッ……と吐き出された息が熱い。無理やりに首を引き寄せられて獣のように口内を探られる。

「は……あいにく俺ァ男と寝る趣味はねぇ」

「嘘つけ。勃ってんじゃねぇか……」

下から突き上げられるように、ぐ、ぐ、と腰を振る。とろん、とまどろむ瞳が濡れる。重ねた布越しに性器がこすれる。じわり、と1度体温があがる。

「頼むよ……気持ちよくしてやるから」

「興味ねぇな」

ぐい、と掌に力を入れるとサンジーンの喉が「ぐっ」と鳴いた。重い腰を擦り付けると「あぁっ……」と甘い声があがる。

「声、出すなよ……男の喘ぎ声なんざ聞きたくもねぇ」

「はっ、好きなくせに……」

チュ、と甘えたような音を立ててかさついた唇に吸い付いてくる。ガチャガチャと金のベルトをはずせば、色のついた瞳がハンゾロウを見上げてきた。

――――蒼。

「……加減が、必要か」

「No, Sir.」

そのまま喉笛に噛み付いた口内には、苦い味が広がっていった。

 

「おい、どけろ。俺ァ死人の血はかぶらねぇ主義だ」

「うるせぇ、俺の体液は好きなくせに」

「あのなぁ……」

ハンゾロウがため息をつくと、何が面白いのかくつくつと笑う。酒を飲んでいるからなのかでかい獲物でもかかったか。サンジーンはやたらと上機嫌だった。ごろん、と獣のように寝返りを打ってハンゾロウの腹に顔をうずめる。

「おい、ヤんねぇぞ」

「んー」

外気に冷やされた白いてのひらが着物の合わせから忍び込む。さわさわと腹を探られると知らず腰に熱が集まった。秋の夜風は窓を揺らし、世界に境界線を引いていく。

夜と、朝の、境目。

「なーお前、俺が死んだら、泣く?」

曖昧な台詞は宙を漂い、時計の秒針に重なって消える。

さらりと落ちる金の前髪。カタカタと揺れる古い窓ガラス。刻々ときざまれる夜の匂いが、ふたりの隙間に溶けていく。宵闇に紛れるあいまいな吐息。

「馬鹿言え。お前が死ぬのは俺が殺るときだけだ」

腹、抱えて笑ってやるよ。

金の髪に指を通せば、くつくつと柔らかな笑い声が腹に響く。するり、と腰から帯がほどけて着物の肩がはだけて落ちる。誕生日。

「ハンゾロウ、愛してる」

「うるせぇ、さっさと死ね」

覆いかぶさった身体が熱い。床に転がる酒の瓶。カチャリと落ちるベルトの金属音。あぁ、今日もほだされる。

「天国見せて殺してやる」

「ハッ……どっちが」

ニヤリ、と笑った唇に噛み付く。甘い味が舌に広がる。熱を帯びた透明な空気がふたりを滑らかに包み込んでいく。

 

(ゾロ誕 4 ― ゾロおめでとう!―)

 

 

 

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