たんぽぽの舞う、海に Since 2013
* ゾロサン 中心、OP二次創作小説サイト。 たんぽぽの舞う海に、ようこそ *
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光の見えない夜に
「んー、ダメだ。わかんねぇな。サンジお前、なんか変なもんでも喰ったか?」
「いや・・・、自分が作ったもん以外は、ここんとこ口に入れてねぇよ。」
「そうかぁ・・・。おかしいな。瞳孔の収縮はみられるし、ちゃんと光も追ってるから、見えてるはずなんだけどなぁ。・・・やっぱり、ダメか?」
「・・・ダメみてぇだ。・・・。」
夜の甲板で力なげにうなだれるサンジを、船員たちが心配そうに取り囲む。
先程から真剣に診察を続けている船医は、ほとほと困ったというふうに首を傾げる。
ふたりの横には、縦に長く積み上げられた医学書の山。しかしそのどれもが、サンジの状況を説明してくれてはいなかった。
「急になったんだろ?ほかに、心当たりはないのか?」
「心当たり・・・ねぇなぁ・・・。いつも通り晩飯作ってたんだ。そしたら目の前が、すぅっと真っ暗になって・・・」
「見えなくなったのか・・・。ん~・・・。網膜の剥離や白濁も見られねぇし、何より瞳孔反応は正常だから、たぶん一時的なものだと思うんだ。・・・ただ万に一つ、感染症の可能性も否定できないから・・・」
「それ、おれがここにいちゃあ、誰かにうつすってことか?」
「うーん・・・可能性は、かなり低いけど・・・。免疫が弱ってる人とか、女性や子ども、お年寄りなんかには、念のため近づかない方がいいぞ。」
「そうか・・・。ロビンちゃん、ナミさん、寂しいだろうけど、しばらくおれから、離れててもらえるか。」
「サンジくん・・・。寂しくはないけど、・・・大丈夫なの?」「えぇ。コックさんの目、見えるようになるといいけど。一生このままなのかしら。」
「ロビン!怖ぇことサラリと言うなよ!サンジ、医務室に運んでやるよ、俺様の背中に乗りな。」
「あぁ、ウソップ、ありが・・・ッ」
礼を言いかけた言葉を遮って、緑アタマがひょいと、サンジを持ち上げた。軽々と片方の肩にかつぐ。
「ッうぉい、いって・・・いきなり何すんだよクソマリモ!」
「てめぇ、体はどこも悪くないんだな?」
「あぁ体は何とも。今のところ、目が全く見えねぇってだけだ。」
「・・・。おいこいつ、食料庫にしまっとくぞ。」
そう言うと、緑アタマは仏頂面のまま、食料庫に向けて歩を進める。
「え!ちょっとゾロ、医務室あいてるんだから使えばいいじゃない、サンジくんだって、」
「女近づけねぇんだろ?もしものことがあったときどうすんだ。医務室は命預かる場所でもあんだ。いつ大怪我するかもわからねぇのに、油断なんてできねぇだろ。」
「でもっ!」
「いやナミさん、そうしてもらうよ。」
「サンジくん・・・」
「“コレ”、まだ続くんだろ?チョッパー。」
「あぁ、たぶん・・・。今はしばらく休んでもらって様子を見るしか・・・」
「じゃあなおさらだ。コイツの言うとおりだよ。医務室におれがいちゃあ、なんかあったときの対応が一瞬でも遅れちまう。おれは体はなんともないし、かといって差し当って何もできねぇから、どっか安全なところに隔離しといてもらうのが一番だ。」
「でも・・・」
「・・・おら。行くぞ。」
心配そうに見守る船員たちを残して、サンジを担いだ緑アタマは、スタスタと食料庫へ向かう。
「サンジ、俺もうちょっと調べてみるから!怖ぇだろうけど、もうちょっと待ってろ、な!」
立ち去る後ろ姿に、船医の必死の声が追いかけた。
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扉がぎぃと開く音がして、肌に触れる空気がひんやりとした。食料庫についたようだ。
迷わずついたのか・・・と思うのと同時に、いきなりドサリと、ほこりっぽい床に落とされる。
「・・・ほらよ。てめぇはしばらくここで寝てろ。」
「ッてぇな、もうちょっと優しくできねぇのかよ。」
「んな女みてぇなこと言ってんじゃねぇ。」
「チっ・・・。あぁクソ、ナミさんに心配かけちまったな・・・。」
「そう思うならさっさと治せバカコック。」
「知らねぇよ!!おれだってどうしようもねぇんだ、なんでこんな・・・っ」
船員たちから離れたからか、思わずぽろりと狼狽が漏れる。
なにも、見えない。
今のサンジには、目の前が真っ暗なのかどうかすら、よくわからなかった。
『見えない』ということが、こんなに心細いことだったとは・・・。
焦る気持ちが無意識のうちに、ため息となって吐き出される。
「辛気臭ぇな。ったく、不安そうな顔しやがって。」
マリモの声が、頭上から降ってくる。そこに、いるのか。
「うっせぇ!こんな状態じゃ誰だって、」
「あぁそうだろうよ。だからってそんな顔、あいつらの前で見せてんじゃねぇよ。てめぇは見えてねぇかもしれねぇが、その面見て余計にまわりは心配してんだよ。」
「ッ・・・。」
思えば確かに、それは正しかった。
医務室にいれば、心配したみんなが、顔を覗きにやってくるだろう。
見えないこと、以外に不調も見当たらず、サンジにとってその好意は至極ありがたかったが、今の状態ではそのたびにまた、不安にさせるだけになるような気がしていた。それじゃあわざわざ、心配させるために休んでるようなもんだ。
あぁ、今のおれ、クソひでぇ顔してんだろうな・・・。
「てめぇはここでしばらく、存分に打ちひしがれてろ。」
次の言葉を言い返せずにいたサンジに、マリモの声がぶすりと突き刺さる。
そのまま気配が遠のき、バタンと扉が閉まる音が聞こえた。
・・・いなくなったのか。
サンジは、今度は大きく、ひとりため息をついた。
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しばらく、と船医は言ったが、一体どのくらいが“しばらく”なのか、サンジにはまったく検討がつかなかった。
このままずっと、見えなかったら・・・。そんな思いが、サンジの脳裏をふとかすめる。
その考えを打ち消すように首を振って、何とはなく、外の音に耳をそばだてる。
光を失ってみて、はじめて気づく。
海を渡る夜風の音、甲板に響く笑い声。
目の感覚を補うためか、いつもより聴覚が敏感になっているようだった。
あまりに普通にありすぎて、気にも留めないもの。本当は大切なはずなのに、見過ごしてしまっているもの。
普段おれは、「見えること」ばかりに、どれだけ頼ってんだろうなぁ・・・。
弱っている証拠なのか、どことなく感傷的な気分がサンジを覆い尽くす。
知らず知らず、ぎゅっと膝を抱く。そうして小さく丸まったサンジの、見えないまぶたの裏側に、さきほどまで目の前にあった気配がふとよぎった。
『あいつ、見えてないって、言ってたな・・・。』
固く閉じられた剣士の片目は、無理やりこじ開けると白く濁っていた。
いつもならば放っておくことだった。あまりに至近距離で見続けていたためか、そのときはどうにも、気になった。まだ熱さの残る、ベッドの中だった。
「光すら、見えねぇ。」
その言葉の後ろには、何の暗がりも見えなかった。
『あいつも、絶望したんだろうか・・・。』
光を半分失った剣士が、その大きな希望の半分を捨てかけたことは、あったのだろうか・・・。
サンジはうつむいて、ギリリと静かに唇を噛む。
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いきなりガタンと扉の開く音がして、外の風が吹き込んだ。
誰が来たかと、見えない目を向けそちらを見上げる。
「パンでいいか。」
あいつの声だ。
「・・・あァ、悪ぃな。ちょうど腹減ってたんだ。そこに置いといてくれよ。」
カタリと皿が、床に置かれた音がする。それを口にしようと手を伸ばしかけたサンジは、マリモが目前にしゃがみこむ空気の動きを感じた。
『・・・?、飯を届けに来たんじゃねぇのか?』
「チョッパーがあんまり心配そうだからよ、」
いつもより低く聴こえる声が、サンジの敏感になった耳をくすぐる。
「おれがてめぇを、見とくことになった。」
「は?」
予想外の言葉に、思わずパンを掴み損ねる。
おれ、こいつに介抱されるのか?
サンジは慌てて、抵抗の言葉を投げ返す。
「いやいいよ別に、パンぐらいひとりで食べれるし、しばらく休んでりゃいいだけなんだから、ここに投げといてもらったらそれで、」
「いんだよ。こういうときぐらい、・・・黙って甘えとけ。」
マリモの言葉が、狭い食料庫に優しく響いた。
気恥かしさのにじんだ声に、ひっそりと気遣いの音色が混ざっている。
マリモの心が、聴こえる。
『あ、そうかこいつ・・・。』
“わかる”のか。
光を失う、怖さが。
誰も近づけないように一人にしたのはそのためだったかと、今さら思い至ってはっとする。
あの場から無理やり運んだのは、おれのプライドを守るため、か・・・。
けっ、不器用なくせに、らしくもねぇことしやがって。
不安で塗り固められたサンジの心が、ふっと緩む。
「ヒマつぶしに、いつもの筋トレでもやってりゃどうだ?」
「んな気分じゃねェよ。」
「・・・別におもしろかねぇよ、こんなところにいたって。」
「あァ、てめぇといるほどつまらねェこたぁねェよアホコック。」
「んだと?一緒に居ろと頼んだつもりはねぇ、嫌なら今すぐ出て行き、・・・ッ!」
心にもない悪態を最後までは聞かず、大きな体がふわりと、サンジの体を抱きしめた。
心臓がドキリと、大きく脈打つ。
「お・・・おい、やめろよ、ッ・・・。」
口をついて出る言葉とは裏腹に、強くは抵抗しないサンジを見透かすと、剣士はぎゅうと、いっそう強く自分の胸に引き寄せる。
愛おしそうな空気が、サンジを包み込んでいる。
「・・・ねェのか?」
「ん?」
「見えねぇのか、・・・目。」
「・・・あぁ。ダメだ。ちっとも。」
「・・・そうか。」
『光すら、見えねぇ。』
押し込めた胸の奥の恐怖が、サンジの意識に立ち上る。
血の滲むほど噛み締めた唇と同じ強さで、剣士の体をきゅうと抱きしめる。
「・・・真っ暗だ。」
「あぁ。」
「いや、真っ暗かどうかさえ、わからねぇ。目を瞑ってるのとは全く違う。見る、ってのを、目が忘れちまったみてぇだ。」
「・・・。」
「おれ、ひょっとして、このまま、」
「大丈夫だ。」
剣士の分厚い掌が、サンジの金色の頭をゆっくりとなぜる。
「・・・大丈夫。」
優しく響く低い声が、サンジの耳元でこだまする。
二度目はまるで、自分に言い聞かせているかのような、小さな小さなつぶやきだった。
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どのくらい、そうしていただろう。
剣士のためらいがちな吐息が、サンジの左耳をくすぐっている。
時折寄せられる静かな口づけがそこに触れるたび、ピクリと体が身じろぎする。
「なんだ・・・?ここ、・・・いつもより、」
「ッ!うっせマリモ!!」
「・・・。」
何かを悟る間を置いて、いきなり左耳にかじりつかれた。
「ひぁっ!」
思わぬ声が漏れ、しまったと思ったときにはもう遅かった。
光の見えない瞳のなかに、ニヤリと意地悪に微笑むマリモの姿が映し出される。
「なんだてめぇ、・・・しっかり感じてんじゃねぇか。」
「・・・ッ!!うるせぇな野獣!いきなり噛み付、ッうぁ!っ・・ふ、・・・ッ」
視覚を奪われたせいで感度のあがった耳元は、どういうわけか、別の敏感さまで賦活したようだった。
「やめ、ちょっ・・・ゾロ、ッふぁ・・・っ!」
「・・・んなかわいいカオで、啼いてんじゃねぇよ・・・誘ってんのか?・・っ」
「バっ、違っ!ッん・・っは・・、」
「ッ・・こっちゃ弱ってるからって、ヤりてぇの必死で我慢してんのに・・・」
「んん・・・っあ、ッ・・・っん、」
「・・・ッは・・」
「うぁ、ゾ・・・ロ、んん、・・も、やめ・・ッ!」
「・・・やめるか?サンジ。」
「え? ――・・・ッッうぁ!!!」
ふいにピタリと止んだ悦楽に、つい一瞬、考えを巡らせてしまった。
そのほんのひと呼吸に承諾の意思を読み取って、剣士はサンジを強引に床に押し倒した。
「バッカ、・・やめろって!俺ぁ今病人なんだぞ!!」
「うるせぇアホコック、んな弱ぇ抵抗でなに言ってやがる。」
「・・なッ!おいマリ、っんぁ・・・、ふ、ッ・・・っクソ、てんめぇ・・・目が治ったら、ぜってぇオロす・・・ッ!」
力が抜けゆく間際の抵抗に、にわかに嬉しそうな気配が滲んだのは、サンジの思い違いではなかったはずだ。
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朝に鳴く、白い鳥の声が聞こえる。
凪いだ海の音を聞きながら、寝転んだままに背伸びをする。
よれた薄紅色のシャツの上から、薄い毛布がかかっている。
隣には、上半身裸のままで転がる、マリモのアホ面が・・・
はっと気づいて、サンジはいきおい体を起こした。
「おい!」
「・・・んん、なんだ?んぁ・・・朝か・・・。」
「おいマリモ!!」
「なんだ、朝からうるせぇな・・・」
「見える!」
「・・・あ?」
「見えた!見えるぞてめぇの、むかつく顔が!!」
「あァ?!!んだとてめ・・・・・ん?見える、のか?」
「・・・治った!!!」
コックは飛び上がって、歓喜の雄叫びをあげた。
罵声を浴びせかけようと体を起こしたマリモは、先ほど放たれたサンジの言葉を飲み込むと、眠そうにまぶたをこすってごろんともう一度、床に寝そべった。
「・・・なんだ。見えねぇ目でよがるてめぇも、かわいかったのに。」
再びスヤスヤと寝息を立てはじめた脇腹に、本気の蹴りを一発入れて、医務室に走る。
「チョッパー!治ったぞ!!」
勢いよく扉を開けると、ライトもつけっぱなしで机につっぷしていた船医が、ハッと顔をあげた。
「うわサンジ!お前・・・見えたのか!!・・・あぁ~、よかったァ~・・・っ!!ううぅ、ごめんなぁ、俺が力不足なばっかりに、サンジを辛い目に・・・」
「いいんだよ、んなもん!チョッパーのせいじゃねぇよ。」
いくつも広げられた医学書のページには、“目”の項目がズラリと並んでいる。
「おまえ・・・寝ずに調べてくれてたのか?」
「サンジの目が見えねぇって聞いてよぉ、おれ焦ってさ、いろいろ調べてみたんだけど、なかなかたどり着けなくて・・・」
船医の瞳が、涙と悔しさで潤んでいる。
「いいんだいいんだ、それに、もう治ったんだから。ほら、綺麗な黒目が見えるだろう?な?今日は、おまえの好物で、朝飯作ろうな。」
「ぐすっ・・・サンジぃ・・・!」
ひしっと右足に抱きついた船医は、そのままおいおいと泣き崩れ、声を聞きつけた航海士が様子を見に来るまで、サンジはその場を動くことができなかった。
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「それで結局、なんだったの?サンジくんの目は。」
「あぁ、それが、おれ昨日すっかり慌てて、見落としてたみたいなんだけど。」
食卓についた船員たちは、ガツガツと朝飯を喰らいながら、船医の声に耳を傾ける。
「器質性じゃなく、心因性の突発性視野狭窄っていうのがあって、」
「しゃきょう?」
「し・や・きょ・う・さ・く。視野が狭まることだよ。普通、全盲になることは珍しいんだけど、かなり大きいことでもあったのか?サンジは全部見えなくなっちゃってたから、それで狭窄の項目をすっかり忘れちゃってた。」
「・・・ふーん。それ、なんでなっちゃったの?」
「心因性だからいまいちはっきりしないけど、なんかこう、急に環境が変わるとか、人間関係の変化が起こるとか、そういうストレスからなることが多いみたいだ。」
「変なの。仲間が減ったわけでもあるまいし。」
「良い変化だって、ストレスだからな。例えば・・・ケッコンするとか。」
ぶはっ!と、サンジがコーヒーを吹き出した。一同が一斉に、サンジを振り返る。
「げほっ、・・・っいや、悪ぃ悪ぃ。ちょっと、咳き込んだだけだ。けほっ、あれ、まだ治ってねぇのかな?」
「ん?視野狭窄に、咳の症状は、なかったはずだけど・・・。」
船医が怪訝そうな顔で、首を傾げる。
「・・・まいいや。それで、まぁ休めばだいたい治るんだけど、早く治す方法として、その原因となったストレスにあえて曝露するっていう方法があるんだ。」
「ばくろ?」
「そう、同じ刺激に触れさせるってことだよ。ケンカした相手が原因だった場合、そのケンカ相手ともういっかいケンカするとか、好きなオスに興奮したのが原因だったら、そのオスともういっか」
「あーーー!!!!チョッパー、よしわかった、ありがとう!!いやぁ、うちの船医は優秀だなぁ!!本当に助かった!!すげぇよお前!!うん!ありがとう!!」
「なんだよサンジぃ~、そんな褒めても、・・・嬉しかねぇぞこのやろが~っ」
嬉しそうな船医が、顔を赤らめてへらへらと笑っている。
一同はなんとなく腑に落ちない顔で、食事の続きをはじめた。
空は快晴。穏やかに風を受ける、麦わら帽子の海賊旗。
今日は絶好の航海日和だ。
「しっかり休んだから、よかったんだとは思うけど・・・。それにしても、やたらと回復が早いんだよなァ・・・。・・・サンジ昨日の晩、なんかあったのか?」
「ごっそさん。」
いちばんに席を立ったマリモが、咳払いをしてすごすごとキッチンから姿を消す。
「あれゾロ、なんか顔赤くなかったか?・・・風邪か?」
不思議そうな船医のつぶやきは、サンジの真っ赤な横顔と一緒に、海の波間に溶けて消えていったのであった。
( 完 ― お幸せに! ― )